‐
ADHD について思うこと
ADHDって、そもそも何なの?
医師や専門家が言っていることに、どことなく違和感や疑問を感じているので、
改めて自分が何を思っているのかを整理してみました。
あくまで自分自身のための覚書きなので、ここに書いたことが正しいということではありません。
こういう考え方、見方もあるのか、というふうに、
皆さん自身が適切に理解を深めていくための参考にしていただければ、それで幸いです。
「ADHD」と診断するためには、一般的には世界共通の診断基準(DSM-5またはICD-10 )に合致する必要があります。
「ADHDとは?」の説明では、ほぼこの診断基準について解説されています。
日本で発達障害というものが散見され出した当初は、ADHDはASD(自閉スペクトラム症)とは別のものとされていて、ADHDとASDは発達障害の中で対極にある症状とも考えられていました。
ただ、実際にはASDではあるがADHDの症状も出ているケースもあるという現状を踏まえて、DSM-Ⅳ(1994年)においては、ADHDとASDが併存している場合はASDを優先的に診断する(ASDはあくまでADHDの上位概念、対立概念としてとらえる)ということになっていました。
ところが、2013年 に改定された現在のDSM-5の診断基準では、ADHDとASDの併存を認める(二つの診断名を併記できる)こととなり、その違いがあいまいなままになってしまいました。
そうなった理由は診療点数に便宜を図るためだと説明している専門家もいました。
ASDと併存する場合があるということは、ASDにもADHDのような症状が出ることがあるということを意味しているのではないかと思います。
アメリカの研究では、成人のASDの59%がADHDの診断基準を満たすという結果もあるようです。
ASDとADHDの診断基準の違いって、何が主症状化による違い(個人的違い)なのではないのでしょうか?
教育現場では、医師からADHD(またはその疑い)と診断されている子どもをよく観察してみると、ASDっぽい特性がところどころにうかがえることも少なくなく、ADHDと診断されているものの、その基盤にはASDがあるのではないかと思える場合も散見されます。
そもそも、発達障害というものの原因や本質自体が医学的には十分には解明されておらず、何が発達障害なのかということに関しては、医師や専門家の中でも見解が異なることが珍しくはありません。 そのため、確定診断が出ずに、「発達障害の疑い」といったあいまいな判断(これも一つの診断ではあります)が下されることも結構あります。
最近では、「グレーゾーン」という表現で、「疑い」なのかどうかすらはっきりしない言われ方をされてくる場合も少なくありません。
そこで、具体的な行動傾向を改めてチェックしてみたいと思います。
ADHDは、①不注意、②じっとしていられない多動、③衝動性がその診断基準になっています。
まず、物忘れや話に集中できない不注意というのは、一般的には、その子がそこに注意を向けておく「必要性を感じない」(必要なことであると自分を納得させることができない)がゆえのこともあります。
また、ミスの多さは、ADHDでは不注意の特性から気が散って集中できないためですが、ASDでは臨機応変な対応が苦手、自分のこだわりを優先してしまうため、などの原因が挙げられます。
つまり、不注意は、ASDにおいて刺激が多くて処理しきれない状況などでも起こるのです。
「ミスの多さ」という点で見れば、ADHDもASDもどちらも同じように見えますが、その原因はそれぞれ異なり、どちらの特性によるものなのかの見極めが難しい場合もあるのです。
次に、じっとしていられない多動、つまり落ち着きがないのは、「好奇心が旺盛」、「ストレス」、「注目を集めたい」、「環境由来」などの原因によります。
「感覚の統合の未発達」といった発達の遅れが原因となる場合があるとも言われています。
感覚統合とは、脳に入ってくるさまざまな感覚刺激を、目的に応じて整理整頓・調整することです。簡単に言うと、脳に入ってくる刺激の交通整理ができるようになることが、感覚を統合するということです。
例えば、私たちの耳は、目の前で話している相手の話し声の他にも、人の足音や空調の音、外から聞こえてくる誰かの声や鳥の声、車の音や風の音など、たくさんの音をキャッチしています。
その「キャッチされた音=聴覚刺激」は、脳の中で重要なものとそうでないものに分けられ、ボリュームの調整がされます。
相手の話し声は大きく聞こえ、他の音はあまり聞えなくなるというように、この調整がうまくいっている状態が、感覚統合ができている状態、つまり環境に対して順応できている状態です。
それに対して、感覚統合がうまくいっていない状態は、すべての音が同じボリュームで聞こえているというイメージです。この状態だと「落ち着いて相手の話に集中することなんて、とうてい無理」なわけです。
ちなみに、「感覚統合の未発達」という現象は、いわゆるASDにしばしば見られる「聴覚過敏」(感覚過敏の一つ)とは脳機能的に異なるものです。
さらに、学校では集団での一斉指導がメインとなるので、学力的に、あるいは性格的に、今みんながやっている勉強や先生の話に対して、退屈したり興味が持てずにいるということもあります。
授業がつまらない、よく分からないがゆえに、ついつい他のことに目が向いて、目の前の面白そうな刺激に安易に飛びついてしまうということもあるわけです。
このように、「落ち着きがない=ADHD」とは必ずしも言えない場合もあるのです。
そして、急に何かをやりたくなる衝動性についても、退屈しのぎや暇つぶしをしたいがゆえのこともあります。また、構ってほしくて(注意をひきたくて)意図的にやっている場合もあり、これらは行動に本人なりの理由・目的があるので、短絡的ではあるが「衝動的」なものではないことになります。
ここで、「衝動性」とは何かを改めて確認しておきたいと思います。衝動性とは、悪い結果になってしまうかもしれない行動を深く考えずに行ってしまうという行動特性のことを言います。
本来は、自分または他人に危害を与えるような行為に至るような強い内的欲求に抵抗できない、自己制御がきかないことを意味する精神医学用語です。
つまり、非合理で、説明がつかない、自分でもなぜそれに駆り立てられてしまうのかよく分からない、そういう傾向を指します。
内部から強迫的に動かされる行為のことで,反省やためらいや意図などの介入する余地がないものを意味しており、心的緊張感を一時的に低下させるために生じた、思慮や分別を欠いた冷静でない非意図的行動を指すのです。
診断基準にある「衝動性」とは、あくまで医学用語であり、教育現場ではこの概念規定がかなりあいまいなまま用いられているという印象があります。
たとえば、思いついたまま行動する、考えてから行動することができない、カッとなって大声を出したり手が出たりする、などの意味で用いられていることが多いと感じます。
本来的な意味では、意図的な行動の場合は衝動的なものとは言えません。本人に何らかの意図(意思)が あると考えられる場合は、「衝動性」そのものではなく、目的行動なのです。
また、怒られなければ大丈夫として、分かっているはずのルールを守れないとか、その場面できちんと自己コントロールする必要があることについての意識のゆるさ(自覚の乏しさ)から来ているのではないかと思える場合もあります。
家庭でのしつけ不足が見え隠れする場合です。
改めて、その子の行動は本当に衝動性の高さによるものなのか、「衝動性」の定義に基づいてきちんと考えてみる必要があると思うのです。
一方、愛着障害にも同じような症状が見られることが多いと感じています。
愛着障害は、発達障害とは全く別の診断基準に基づく診断名ですが、この見分け方は専門家でも難しいと言われています。
また、しつけの失敗といった不適切な養育態度が原因となっている場合も依然としてあります。
また、ADHDの子どもでしばしば問題になるのが、周りの人への攻撃行動(粗暴性)が見られる場合です。
これは、困りごと(ストレス)と今の気持ちがどうして繋がっているのかを直感的に理解できないために起こるものと考えられています。
自分の気持ちや相手の気持ちに注意が向かないことが主な要因ですが、それが「衝動性」の高さによるものというふうに理解されてしまっていることも残念ながら多いです。
「人の気持ちがわからない」というのは、相手のことだけでなく自分の気持ちもわからないということなので、「今、あなたはこれに困っているのですよね」「このようなことで傷ついたからイライラしているのですよね」といった話をしていくと改善できることもあります。
一方、ASDの特性に周囲の理解が得られず、ストレスが続くと、身体や気持ち、行動面に症状(二次障害の症状)が現れ、乱暴な言葉遣い、暴力が見られることもあるので、攻撃行動が見られる場合はADHDだとは必ずしも言えないことになります。
このように、ADHDと診断される際の症状は、実は他の要因から出ている場合もあるということなのです。
診断はときに主観的であり、流動的なものでもあることを承知しておく必要があります。
特に、ある場面での行動特徴だけから判断していくことは避けなければならず、必ずこれまでの成育歴や家庭での様子、外出先での行動特徴なども丁寧にチェックした上で、かつ現在の行動特徴を複数の目でできるだけ多くの場面についてとらえていくことが欠かせないのです。
保護者の話だけからADHDだと判断してしまうことは大変危険なのです。保護者としては、医師から子どもの様子について質問されれば、マイナス部分を際立たせて答えてしまいがちで、そうなると、診断結果は「発達障害の可能性が高い」となりやすくなります。
特にADHDのチェックでは、日ごろの見た目の行動特徴がはっきりしていることが多いだけに、親自身の認知の歪みが混入している可能性をも視野に入れて慎重に検討される必要があるのです。
発達障害の診断方法は基本的に、米国精神医学会が発行する診断マニュアルの「DSM-5」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5)をベースに、患者の周囲の人間、つまり家族や教師に聞き取り調査を行うというものです。
内容も「多動性があるか」「周囲と合わせることができないこだわりがあるか」「読み書きに困難さを抱えているか」など、極めて主観的な項目が並びます。質問も曖昧なら、それに回答する方の物差しも曖昧です。
実際にADHDと診断されている大人の人の話を聞いてみると、そこで挙げられる行動特徴の中には、「あれ、それってASDの行動特徴だよね。」と思えるものが混じっていることも少なくありません。聞けば聞くほど、ASD とADHDの違いが分からなくなってくるのです。
もはやその二つを明確に区別することは困難なのではないか、現実的ではないのではないかとも思えてきます。
このように考えていったときに私が思うのは、ADHDという診断概念はそろそろ別の概念に変更していく必要があるのではないかということです。
ADHDをASD と別概念とすること自体に既に無理が生じており、この二つを再統合した新たな名称が求められます。
そもそも、ASDを自閉症の一つと見るところに以前から違和感を感じていた私は、「発達障害」という「発達」という言葉を用いている点にも現在の教育現場における誤解や混乱の原因を感じています。発達障害の「発達」とは、脳の機能的な発達のことを指していますが、発達の遅れ・未熟さといった一般的な「発達」という言葉と混同されていることが非常に多いです。
ちなみに、「愛着障害」の「愛着」という概念もしばしば十分な理解がなされないまま、「それって愛着の問題ですよね」というような言い方をされている場合も散見されます。
これらの言葉上の混乱を解消していくためにも、「発達障害」という概念自体をより適切な表現に変えていくことが大切だと思います。
更に、ほとんどの方には理解されにくいこととして、発達障害的な特性を有している子どもたちの中には(実際には相当数いるようですが)、ある理由・目的があって今の時代に宇宙から地球に転生してきた子どもがいるという指摘です。
そういう子どもたちは、「インディゴ・チルドレン」とか「クリスタル・チルドレン」という呼ばれ方をしていて、いずれも大きな使命を持って、前者は1970年代後半から地球に到着し始め、後者は1990年代前半から地球に到着し始めたと言われています。(いずれも、その少し前から情報収集や準備のために地球に来ている者もいるようです。)
そして、実は、ADHDと診断される者が前者に、ASDと診断される者が後者にしばしばいるのだそうです。
発達障害の子どもを見ていて、「宇宙人みたい」と時々冗談交じりに言いますが、もし本当にそうだとしたらすごいことです。
すべての発達障害の子どもがそうだとは言えないでしょうが、もし本当にそうだとしたら、その子どもを何やら普通の子と違うからとの理由だけで「精神障害」としてしまうことはとんでもないことになります。
いずれ、社会全体が正しい理解をしていく必要性に迫られれば、おのずと呼び名も変わっていくのだろうと思います。
だからと言って、それまでは現状維持で良いということではなく、発達障害のように見える子どもたちであっても、実際には障害なんかではないということ、単に今の私たちには理解できない特性を持って生まれてきた素晴らしい存在なのだという認識を少しでも持てるようになっていくことが大切なのではないかと思うのです。最近では「ギフテッド」と呼ばれる特別な存在の子どもたちもいると言われています。
現在社会の中でさまざまな矛盾や葛藤を抱えながらもそれをごまかしながら生活している私たち大人に対して、本当に大切なこと、より適切な価値観や生き方を教えようとしてくれているのだと、多くの方がぜひとも思えるようになってほしいと心から願っています。
最後に、参考までに、ネットで紹介されていたADHDの歴史を記載しておきます。
CHADDがまとめた記事によると、ADHDと思われるものについて最初に言及したのは、なんと古代ギリシアで活躍し、現代医学の父とも呼ばれるヒポクラテスでした。(CHADD:正式名称Children and Adults with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder. 1987 年に設立された ADHD を有する者とその家族のための全米で一番大きな非営利団体)
それ以降、ADHDは様々な定義を経て現在の概念を形成してきました。
注目すべきは、ある時期には、「微細脳損傷:minimal brain dysfunction(MBD)」と呼ばれていたものがここに含まれていることです。この診断名は現在では用いられていませんが、それがADHDという診断名に変更されたという経緯があります。
医学的診断基準が確立する前の病患概念、DSM(米国精神医学会が精神障害の診断・治療を体系的に記述した国際的診断基準)とICD(世界保健機関(WHO)が死亡原因の調査や疾病データの体系的記録と分析のために作成した医学分類)以前の病患概念について、Who says this is a modern disorder? The early history of attention deficit hyperactivity disorderによれば、
1775年 Melchior Adam Weikard 「不注意」”Attention Deficit”(“Mangel der Aufmerksamkeit”) 病患概念として医学的に初めて記載しました。自身の教科書の中でADHD様症状の不注意を呈する症例について記述しています。
1789年 Alexander Crichton 「注意の病気」”Disease of attention”’Mental Restlessness’にて報告しています。
1812年 Benjamin Rush 「注意を向けることの不安定さが関与する症候群」”A syndrome involving inability to focus attention”
1848年 Charles West 「神経質な子供」”The nervous child”
1859年 Heinrich Neumann 「変成」”Hypermetamorphosis”
1885年 Désiré-Magloire Bourneville 「精神不安定」”Mental instability”
1892年 Thomas Clifford Albutt 「不安定な神経系」”Unstable nervous system”
1899年 Thomas Smith Clouston 「単なる異常興奮性」”Simple hyperexcitability”
1902年 George Frederic Still 「道徳的統制の欠如と抑制意志の欠陥」
1908年 Alfred F.Tredgold 「心理的欠陥」の中で反社会的行動について考察
1917~1918年 エコノモ脳炎の後遺症研究者 「脳炎後の行動障害」として考察
1942/1947年 Strauss 「脳損傷児「brain-injured child」の概念を提唱
1957年 Laufer 「多動症的衝動障害」として考察
1959年 Knoblock,Pasamanick 「微細脳損傷:minimal brain dysfunction(MBD)」という概念を提唱
1960年 Chess 「多動症候群(The hyperactive child)」として考察
1962年 小児神経学領域国際研究グループ 「微細脳機能障害:minimal brain dysfunction」という概念を提唱
1968年 DSM-Ⅱ (米国精神医学会が精神障害の診断・治療を体系的に記述した国際的診断基準) 児童期の多動性反応(病患概念として初めて登場) 下位項目:多動が前面の分類
・・・この時点では、子供たちに落ち着きのなさや気を散らすものを引き起こすと考えられていました。また青年期までに治る、あるいは軽減すると信じられていました。
1977年 ICD-9 児童期の多動症候群として初めて概念化 下位項目:多動が前面の分類
1980年DSM-Ⅲ 通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害。注意欠陥障害の中で、1)多動を伴うもの、2)多動を伴わないもの、3)注意欠陥障害残遺型を規定。 下位項目:不注意が前面の分類
・・・この時点でADHDの状態・症状についての理解が深まったと言えます。しかしまだこの当時はADHDとは呼ばれておらず、APA(アメリカ精神医学会)は、多動性の有無にかかわらず、注意欠陥障害(ADD)と名付けていました。
1987年 DSM- Ⅲ-R 行為障害、反抗挑戦性障害とともに破壊的行動障害の中の位置づけ。1)注意欠陥多動性障害、2)識別不能型注意欠陥障害を規制。14項目の症状リスト。 下位項目:不注意、衝動性、多動を区別しない ここで名称がADDからADHDに変更されました。
1992年 ICD-10 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害。その中の多動性障害として1)不注意、2)過活動、3)衝動性を規定。
1994年 DSM-Ⅳ 2000年 DSM-Ⅳ-TR 注意欠如および破壊的行動障害。その中の注意欠陥/多動性障害として1)不注意優勢型、2)多動ー衝動性優勢型、3)混合型の下位項目に分類。
・・・この時点でADHDの診断や症状の細分化が明確になりました。 ADHDの症状は、不注意優勢型、多動衝動優勢型、2つの型両方の症状が現れる複合型の3種類に分けられました。
2013年 DSM-5 神経発達症/神経発達障害。その中の注意欠如・多動症として、症状の発現を「12歳未満」に変更、症状の該当項目数を「17歳以上は5項目」に軽減し、自閉症スペクトラムとの併存を認める。
(2024.6.3)